恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
「今日はね、父さんも胡桃も早く帰ってくるから、みんなが好きなオムライスだよ」
その言葉に、笑顔に心臓が締め付けられる。
「もうすぐ帰ってくるからね!準備しなきゃ!!」
母さん…分かってる?
父さんも姉さんも、もういないんだよ?
声が出るなら、立ち上がりこっちを見る母さんに言いたかった。
伝えたかった。
でも、出来ない。
泣きそうになる自分を押さえて、無理矢理笑顔を向ける。
そしてそのまま自分の部屋へと逃げ込んだ。
母さんは、姉さんが死んだあの日からずっとオムライスを作り続けている。