
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
"一緒にいたい"
その言葉が無性に嬉しかった。
ずっと一緒にいるものだと思っていたのに、叶わなかった家族。
一緒にいても、いないも同然の母さん。
でも梓は…梓だけは一緒にいてくれるか?
期待しても、信じてもいいか…?
『大切な人にはね、いつまでも一緒にいて欲しいって思うものだよ』
昔、姉さんにそんなことを聞いた気がする。
でも、大切に思っていた姉さんはもういない。
だからせめて、変わらない梓だけは…。
俺は梓を抱き締めながらそんなことを考えていた。
梓以上に一緒にいたいと思っている筈の母さんのことを、この時はあまり考えていなかったのかもしれない。
