
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
ゴミ箱の中に梓のイチゴが捨てられていた。
真っ赤に熟れた美味しそうだったイチゴが、ゴミ箱の中で死んでいる。
駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ。
心の中ではそう叫び続けている。
でも、怒りが、身体が止まらない。
いつの間にか、リビングでまだ座っている母さんの腕を掴んでいた。
「痛っ…聡?どうしたの?」
嫌だ、止めてくれ。
この先を俺は知らない。
どうしたらいいのか分からない。
「…聡?」
再び俺の名を呼ぶ母さんを無理矢理立たせ、引っ張った。
お願いだ、止まれ俺の身体。
これ以上、刺激を与えてしまったら母さんは―
