
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
「何が不満なの?!私は精一杯"母親"をやっているのよ?!?!どうしてみんな離れて行くの…っ?!」
何枚も、何枚も皿が割れる。
母さんもどんどん壊れていく。
俺はここにいるよ、と。
母さんと一緒にいるよ、と叫びたかった。
伝えたかった。
なのに声は出ない。
出てくれない。
どれだけ口を動かそうとも、喉に力を入れようとも、一言も発せられない。
もう嫌で嫌で…死にたかった。
「どうして…っ!!」
その時母さんが俺の胸ぐらを掴んだ。
「どうしてお前は声を出さないっ!!」
俺を睨む母さんの目。
そこには俺が写っていた。
今にも泣きそうで、悲しそうな俺が。
母さんの目にくっきりと写っていた。
