
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
「坊主。大丈夫か?」
家の前に止められた救急車で手当てを受けていた俺は、山本さんに話しかけられた。
山本さんは警察の人で、いつもお世話になっている人だ。
毎回俺を助けてくれて、毎回母さんを病院に入れることを勧められる。
優しいが、俺にとっては残酷な現実を突きつける人―。
幸いにも俺の外傷はそれほど酷くもなく、軽い手当てだけですんだ。
そんな俺は救急車を見送り、玄関にすわった。
そして俺の隣に座り、タバコを吸う山本さん。
タバコがよく似合う渋い男だと常々思う。
