
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
「今回は…本当に危なかったな」
山本さんは煙と共に言葉を吐き出した。
事実、梓があと1分でも遅かったら、俺は今ここにいるか分からなかった。
それほど母さんは狂っていた。
「通報して来た姉ちゃんもな、かなりパニクってて、今は別で落ち着かせてんだ。会いたくてももうちょっと待ってろ?」
梓に…か。
会いたいのか会いたくないのか…。
自分でもよく分からない。
それほど俺の心の中は空っぽだった。
何の反応もしない俺の状況を察してか、山本さんは俺の頭を乱暴に撫でた。
その手が温かくて…溢れそうな涙を必死に堪える。
