恋愛短編集
第1章 まぁくんの隣
「胡桃ぃ…」
まぁくんが、また私を呼ぶ
その声は涙ぐんでいた
すっ、とまぁくんがこっちに手を伸ばした
見えている訳がないのに、こっちに手を伸ばした
私にとっては、その手は私の膝の上
まぁくんにとっては、その手は何もない空間
まぁくんはその手を何かを探すように動かしたが、何も見つからない
私にとっては、その手は身体のあちこちをすり抜ける
絶対に触れないこの身体
触って欲しいのに触れない
「胡桃…胡桃…」
まぁくんがこちらを向く
その目からは涙が止めどなく溢れていた
でも私はなにもできない