
恋愛短編集
第4章 反対側のキスマーク
「ごちそうさま」
私はそう言ってイスから立ち上がった。
「あれ?もういいのか?」
机の上にはまだ半分以上残ったフレンチトーストやサラダがある。
でも、もう食べる気にはなれない。
ここから一刻も早く抜け出したかった。
「帰る」
「えっ、ちょ、なに怒ってんの?!」
部屋を出ていこうとした私の腕を、朗が掴んだ。
でも私は振り向かない。
「どうしたんだ?体調悪いとか―」
「離して」
「それならそうで送るから―」
「離してっ!」
しーんと静まり返るリビング。
時々聞こえるのは、ポットのコポコポという音だけ。
「ごめん…」
そう言いながら朗は手を離してくれた。
私はそのまま、一直線に泣きながら家まで走った。
