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恋愛短編集

第4章 反対側のキスマーク


思わず顔を上げると、駿君と目が合う。

そして、唇に温かい何かが触れた。

それが唇だということに気づくのには、そう時間がかからなかった。


「左側のキスマークは彼氏さんの特権なんですね…」


唇が離れた後、駿君がぽつりと呟く。

それは本当に小さな呟きで、ともすれば風にかき消されてしまいそうだった。


「最後にもう一回だけ―――



彼氏さんに振られたら、俺と付き合ってください」


そう言って駿君は私を置いて離れていった。

取り残された私は、いつもと反対側にあるだろう赤い印の熱を感じながら考える。


私はどうすればいいの…?


いつしか私は泣き崩れていた。

遠くから聞こえる喧騒と波の音が恨めしかった。

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