
恋愛短編集
第4章 反対側のキスマーク
その日の夜。
私は言われた通り朗の家へ向かった。
ピンポーン―
玄関の前でチャイムを鳴らす。
直ぐにドアが開き、朗が顔を出す。
「いらっしゃい。上がって」
いつもの笑顔で言う朗。
特に変わった様子はない。
よかった…
悪い予感は、今回は外れたみたい。
そのまま上がってリビングのソファーに座ると、冷たい麦茶を出してくれた。
「ありがとう…」
「いーえ、どういたしまして」
そして朗も私の隣に腰かける。
「…」
「…」
しばらくの沈黙。
いつものことだが、いつも以上に気まずい。
だから今日も私から話しかけようとした。
でも今日は違った。
「詩織」
