
恋愛短編集
第4章 反対側のキスマーク
呼ばれて朗を見ると、こちらを見つめていた。
久々に見られた気がする。
でも、私は直ぐに顔を正面に向けた。
「なに?」
可愛くないなぁ…私。
こんなんだから駄目なんだよね。
朗はそんな私の髪を触る。
「あのさ、この間のことなんだけ…ど……」
そこで朗が止まった。
言葉も動きも空気も全部止まった。
不思議に思って、ちらりと朗のいる右側を見る。
その表情は―無表情。
先程までの笑顔と全く違う。
「なに…これ…?」
朗の目線の先は私の首の右側。
そこには昼間の駿君の赤い印がくっきりと残っていた。
いつもとは反対側のキスマークが。
