恋愛短編集
第4章 反対側のキスマーク
しばらく朗は何も言ってくれなかった。
ちゃんと伝えたよ?
私の気持ち…
だから…お願いだから教えて…
もう涙なんか止まらなくて、嗚咽も隠せない。
お願い…朗……
すると―
ギュッ―…
突然、抱き起こされて力強く抱き締められた。
すっぽりと朗の腕の中に収まる私の身体。
そして耳元で囁かれる。
「詩織、ごめん」
その声は昔の様に甘くとろけるようで、そして涙で濡れていた。
「大好きだよ」
私の中から熱いものが込み上げてくる。
涙の温度が変わる。
「それ…本当?」
「ここで嘘言ってどうすんのさ」
耳元で朗が小さく笑った。
いつぶりだろうか、この気持ち。
嬉しくて、幸せで、夢のようで―。
もう2度と味わえないと思っていた。
私はこれ以上無いくらい朗を抱き締めて、その胸の中で思いっきり泣いた。