恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
「そういえば今日は家庭科があってな…」
梓が何やら鞄をごそごそと探っている。
気になった俺は身体を起こした。
なんだか甘い匂いが漂ってくる。
「クッキー作ったんだ!」
笑顔で差し出してくれる梓。
やべぇ…この笑顔可愛すぎる…
梓はイギリスの某推理小説の主人公の様な喋り方をする。
ま、実際に読んだことはないから、あくまでも勝手なイメージだけど。
だがその紳士的な喋り方とは異なり、姿形は天使の様に可愛い。
俺はそんな天使から幸せのひとかけらを受け取る。
…ひとかけらは黒かった。
さっきの甘い匂いは幻か?
俺が受け取ったこれは死神からのプレゼントじゃなかろうか?
「すまない…何故か爆発して、まともなのがこれだけしか無かったんだ」
…これだってまともじゃないぞ。