記憶売りのヤシチ
第2章 真実
――なぜなら、この術は。
そこに、彼はいた。窓辺に寄り添うように座っている。まるで、これから訪れる何かを静かに受け入れるように。
「オトギリ…」
彼の名を呼ぶ。窓の外を眺めていた彼は、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。
――私がかつて、恋人だった彼にかけたものと同じだから…。
「…思い出してしまったんだね。トキトリ」
彼は愛しげに、かつての私の名を呼んだ。全てを思い出した私に、その声はせつなく響く。
そうだ…私の何もかもを、髪の毛一本さえ愛しているかのような声。端々にまで愛を感じる、とろけてしまいそうな甘いこの声を…私はなぜ忘れていたのか。
彼は…私の恋人だった。それは、私たちが人間ではなかった頃のこと。
誰もが術を使える世界。まだ幼かった私たちが最初に出会ったとき、彼は地下牢に幽閉されていた。何も知らない私が彼に名を尋ねると、彼は「オトギリ」と名乗った。
その不吉な名は、弟殺しの罪によりつけられたものだった。彼はその罪で投獄されていたのだ。
そこに、彼はいた。窓辺に寄り添うように座っている。まるで、これから訪れる何かを静かに受け入れるように。
「オトギリ…」
彼の名を呼ぶ。窓の外を眺めていた彼は、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。
――私がかつて、恋人だった彼にかけたものと同じだから…。
「…思い出してしまったんだね。トキトリ」
彼は愛しげに、かつての私の名を呼んだ。全てを思い出した私に、その声はせつなく響く。
そうだ…私の何もかもを、髪の毛一本さえ愛しているかのような声。端々にまで愛を感じる、とろけてしまいそうな甘いこの声を…私はなぜ忘れていたのか。
彼は…私の恋人だった。それは、私たちが人間ではなかった頃のこと。
誰もが術を使える世界。まだ幼かった私たちが最初に出会ったとき、彼は地下牢に幽閉されていた。何も知らない私が彼に名を尋ねると、彼は「オトギリ」と名乗った。
その不吉な名は、弟殺しの罪によりつけられたものだった。彼はその罪で投獄されていたのだ。