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記憶売りのヤシチ

第2章 真実

やっていない、と無感情に言う目の前の男の子を、私は無条件に信じた。不思議な雰囲気をまとう彼に、既にこの頃から惹かれていたのかもしれない。

私はその日から、自分を「トキトリ」と名乗った。これも、あまり縁起の良い名前ではなかった。彼に名を告げると、彼は愛しそうにそれを繰り返した。それから彼の言葉は、次第に感情を持っていった。

月日が経ち、私たちは大人になっていた。優秀な術使いとなっていた私は、未だ牢に入ったままの彼と密かに愛し合っていた。人目を忍び、檻越しに交わした口づけ。絡めあう指。…幸せだった。

だが何度も会瀬を重ねるうち、ついにそれが知れてしまった。私の術使いとしての師でもある父は激怒し、私に術をかけた。愛すれば愛するほど相手の生を奪っていく、呪いのような術を。

私は彼に会うのをやめた。けれども、何度振り払おうとしても彼を想ってしまう。愛することを、止められなかった。私は決意を破り、彼にもう一度会う。

彼は以前より元気のない様子だった。やっぱり私のせいか、と目が潤む。力無く伸ばす彼の手を、両手で包み込む。彼の手が傷だらけであることに気づき、涙がこぼれた。

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