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「………嘘つけ」
「え？」
「これまで、一度も会いにも来なかったくせに…会いたかったなんて言うなよ」



深く傷ついていたことが声から伝わる



「ごめんなさい。

……でも本当に会いたかったわ」



「あの男は父親らしいことなんて何ひとつしないで。
何人も女作って、子供は金さえ与えておけば育つと思ってるんだ。

あんな男のところに一人残されて……
俺は………っ……」



「陽」



お母さんはベッドから少し身をのりだして、陽の手を両手で包むように握る。



「陽、あなたはお父さんのこと、誤解してるわ。

…たしかにお父さんに愛人がいたのは本当よ。あれだけかっこよくてお金持ちなら、嫌でも女の人が寄ってくるもの」



陽のお母さんはにっこり笑った。



「でも、決してあなたのことを愛していないわけじゃない。

…不器用な人だから、どう接したらいいのか分からないだけ。
でもいつでもちゃんと見守ってる。



実はね、お父さん、私が家を出て行ってから、必ず毎月、月に一度は電話をくれていたの。

陽のこと、話してくれていたのよ。十数年ずっと…」




「家を出て行ってしまったこと、本当に申し訳なく思ってる。

出て行くなら、もう二度とこの家に戻らない…そう決めたのはお母さんなのよ。

くだらない意地を張ったこと、後悔してる。寂しい想いをさせてごめんね……」






陽はただ黙って、お母さんの話を聞いていた……