
手紙~天国のあなたへ~
第2章 雪の記憶
顔に冷たいものが触れたような気がして、留花は面を上げた。今朝、起きたときから灰色の重たげな雲が都の上を覆っていたけれど、どうも雪になったらしい。せめて家に帰り着くまでくらい、待ってくれても良かったのにと、どうしようもないことを恨めしく思ってしまい、留花は一人で苦笑する。
そのときだった、往来の向こうから男が物凄い速度で走ってくるのが見えた。
ここは漢陽でもとりわけ賑わう町中の大路だ。現に今も留花の両脇を忙しなげに馬に乗った人や歩行者が行き交っている。
―危ないッ。
声にならない悲鳴を上げ、咄嗟によけようとしたが、時は既に遅かった。
留花に向かって真っすぐに走ってきた男はもちろんのこと、真正面から盛大にぶつかった。
「ツ、痛ってえ」
男は一見したところ、その日暮らしの傭人(やといにん)のように見えた。もしくは、どこかのお屋敷の下男といったところか。身に纏っているのは質素な麻のパジチョゴリではあるが、きちんと洗濯され、継ぎも当たっている。
そのときだった、往来の向こうから男が物凄い速度で走ってくるのが見えた。
ここは漢陽でもとりわけ賑わう町中の大路だ。現に今も留花の両脇を忙しなげに馬に乗った人や歩行者が行き交っている。
―危ないッ。
声にならない悲鳴を上げ、咄嗟によけようとしたが、時は既に遅かった。
留花に向かって真っすぐに走ってきた男はもちろんのこと、真正面から盛大にぶつかった。
「ツ、痛ってえ」
男は一見したところ、その日暮らしの傭人(やといにん)のように見えた。もしくは、どこかのお屋敷の下男といったところか。身に纏っているのは質素な麻のパジチョゴリではあるが、きちんと洗濯され、継ぎも当たっている。
