
手紙~天国のあなたへ~
第2章 雪の記憶
「済みません」
ぶつかってきたのは向こうの方ではあったが、留花は先に自分から謝った。
同じく麻布を頭に巻いた男は三十歳そこそこくらいで、良い大の男がみっともなく〝痛ぇ〟と繰り返しているのは、あまり見られたものではない。
留花もまた、衝突した弾みに思いきり後方へ飛ばされ、したたか尻を打ったのだが、幸いにも、たいした怪我は負わなくて済んだようであった。
「あの、どこかお怪我でも―」
やっとのことで立ち上がり問いかけた留花に向かって、男がいきなり喚いた。
「一体全体、どういうつもりだ? 天下の往来をボオーとして歩いてるんじゃねえや」
地方から出てきたのか、語尾に強い訛りのあるその話し方のせいで、余計に下品に見えてしまう。
しかし、祖母の〝他人を見かけだけで判断しちゃいけないよ〟のいつもの科白を思い出し、留花は努めて丁寧な物言いを心がけた。
「どこかお怪我はありませんか?」
と、相手の男が我が意を得たりとばかりに口を開く。
ぶつかってきたのは向こうの方ではあったが、留花は先に自分から謝った。
同じく麻布を頭に巻いた男は三十歳そこそこくらいで、良い大の男がみっともなく〝痛ぇ〟と繰り返しているのは、あまり見られたものではない。
留花もまた、衝突した弾みに思いきり後方へ飛ばされ、したたか尻を打ったのだが、幸いにも、たいした怪我は負わなくて済んだようであった。
「あの、どこかお怪我でも―」
やっとのことで立ち上がり問いかけた留花に向かって、男がいきなり喚いた。
「一体全体、どういうつもりだ? 天下の往来をボオーとして歩いてるんじゃねえや」
地方から出てきたのか、語尾に強い訛りのあるその話し方のせいで、余計に下品に見えてしまう。
しかし、祖母の〝他人を見かけだけで判断しちゃいけないよ〟のいつもの科白を思い出し、留花は努めて丁寧な物言いを心がけた。
「どこかお怪我はありませんか?」
と、相手の男が我が意を得たりとばかりに口を開く。
