
手紙~天国のあなたへ~
第2章 雪の記憶
「この痛さじゃア、どうやら脚の骨を折ったかもしれねえ、いや、ひょっとすると、右の腕の方も骨にヒビが入っちまったかも」
男の顔から薄ら笑いがかき消え、代わりに凶悪な形相が浮かぶ。髭面のなかなかの男前ではあるが、どこか荒んだ退廃的な雰囲気が漂っている。できれば、あまり拘わり合いたくない手合いだ。
「どうしてくれるんだよ? 俺はこう見えても、ちったア、名の知れた銀細工職人なんだ。それなのに、肝心の利き腕を折っちまったんじゃア、どうやって仕事しろと?」
男は更にまくし立てた。小さな家には生まれたばかりの赤児と妻、腹を空かせた幼い子ども一人が待っていると。
「ああ、俺が仕事できなくなっちまったら、嬶(かか)ァと二人のガキはどうなるんだ? この寒空に一家で飢え死にか、さもなければ、親子心中でもしろってか?」
留花はその言葉に息を呑んだ。いかに虫の好かない相手とはいえ、自分とぶつかったばかりに無理心中しなければならなくなったとは気の毒だし、申し訳ない。
男の顔から薄ら笑いがかき消え、代わりに凶悪な形相が浮かぶ。髭面のなかなかの男前ではあるが、どこか荒んだ退廃的な雰囲気が漂っている。できれば、あまり拘わり合いたくない手合いだ。
「どうしてくれるんだよ? 俺はこう見えても、ちったア、名の知れた銀細工職人なんだ。それなのに、肝心の利き腕を折っちまったんじゃア、どうやって仕事しろと?」
男は更にまくし立てた。小さな家には生まれたばかりの赤児と妻、腹を空かせた幼い子ども一人が待っていると。
「ああ、俺が仕事できなくなっちまったら、嬶(かか)ァと二人のガキはどうなるんだ? この寒空に一家で飢え死にか、さもなければ、親子心中でもしろってか?」
留花はその言葉に息を呑んだ。いかに虫の好かない相手とはいえ、自分とぶつかったばかりに無理心中しなければならなくなったとは気の毒だし、申し訳ない。
