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手紙~天国のあなたへ~

第5章 夫婦

 その日は、愃が来なくなって既に十二日目だった。今まで幾ら間が空いても、十日めには律儀に通ってきている。来られない原因をあれこれと詮索していると、もしかしたら、急な病に伏しているのかもと―、また別の方面で不安になってしまう。
 外は冷たい風が吹き抜けるのにも頓着せず、留花は家の前に何度も出ては様子を窺った。
 今日はおいでになるのではないだろうか。いや、明日こそは、きっと姿をお見せになるはず。
 そう思い続けて、はや十二日が経った。留花はもう居ても立ってもいられず、表に出て愃を待つことにしたのだ。
 あまりの寒さに一旦は家に引っ込んだが、やはりじっとしていられなくて表に引き返した。

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