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手紙~天国のあなたへ~

第5章 夫婦

 手持ち無沙汰なので、しゃがみ込んで地面に意味もない落書きをしてみる。それに、じっと立っているよりは、何かしている方が気が紛れるし、寒さも少しは気にならない。まず最初に地面に〝李愃 留花〟と書き、続けて二人の名前の下に〝良人〟と〝妻〟を書き足した。
  
  李愃 良人
  崔留花 妻 

 立ち上がって何度も眺めてみる。留花は文字の簡単な読み書き程度ならできる。香順が教えてくれたのだ。
 うん、我ながら、なかなか良い出来だ。留花は自分で悦に入って、嬉しげに地面を眺めた。
 その時、背後から聞き憶えのある声が聞こえた。
「私の可愛い奥さんは、こんなところで何をしているのかな?」
「旦那さま」

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