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手紙~天国のあなたへ~

第5章 夫婦

 留花は自分でもいささか気恥ずかしくなるくらいの歓声を上げた。
―私の可愛い奥さん。
 その呼び方に、頬が熱くなる。他人はたったひと言で機嫌を直してしまう自分をさぞ愚かな女だと蔑むだろうが。
「何だ、落書きをしていたのか?」
 愃が後ろから覗き込もうとするのに、留花は頬に朱を散らした。
「駄目、見ないで下さい」
 懸命に立ちはだかって隠そうとするのに、愃はひょいと留花を抱き上げた。
「うん? これは何だ」
 愃は留花を腕に抱いたまま、地面を凝視している。
「旦那さま、降ろして下さい、旦那さま!」
 抵抗するも、愃は笑いながら視線を地面から留花に戻した。

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