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手紙~天国のあなたへ~

第5章 夫婦

「どうやら、これは恋文のようだな。そなたから私への想いのたけを綴ろうとしていたのか?」
 からかうように言われ、留花は更に真っ赤になった。
「ち、違います。第一、私は恋文なんて、そんな長くて難しいものは書けません。簡単な文章くらいなら書けますけど。それよりも、旦那さま、早く降ろして下さいませ。幼子でもないのに、他人に見られたら恥ずかしいです」
 真顔で言う留花の頭を撫で、愃は漸く彼女を解放した。
 留花は熟した林檎のような顔を見られたくなくて、慌てて家の中に入った。
「達者にしていたか?」
 後を追うようにして入ってきた愃は、決まった場所に座った。いつものようにまるでこのあばら屋こそが我が家でもあるかとでも言いたげに寛いでいる。

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