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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

 六月ももうそろそろ終わりに近づいた蒸し暑い日のことだった。漢陽にも陰気な梅雨の季節が訪れ、ここ数日はずっと雨が続いていた。
 その日も朝から雨が降っていたが、留花は構わず洗濯物を持って河原まで出かけた。
 家を出たところで、腕組みをして通せんぼのように立っている成洙に出くわした。
「こんな雨降りの日に、わざわざ洗濯に出向くとは酔狂なこった」
 留花は咄嗟に顔を背け、唇を噛みしめた。
「雨といっても、たいしたことはないもの。一杯溜まってるから、さっさと片付けておきたいのよ」
「ホウ、お前一人の洗濯物でそんなにたくさん溜まるほどあるのかね」
 皮肉げに言われたが、洗濯物が溜まっているというのは満更嘘ではない。ここのところ、河原に行って近隣の女たちと顔を合わせるのが厭になってしまい、洗濯する機会がない。

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