
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
静かに扉が閉まる音が聞こえて、成洙が出ていったのだと判る。
留花はそっと伏せていた顔を上げた。
ふと気付くと、傍らに小さな籠が置いてあり、蜜柑が数個入っている。成洙が置いていったのだ。
最初は意地でも食べまいと思っていた。心配してくれるのはありがたいが、成洙もまた他の人と同様に留花が愃に棄てられたのだと端から決めつけている。留花にはそれが哀しかった。
だが、本当にそうなのだろうか? 自分だけは愃はただ忙しいだけだ、明日にはきっと来ると信じているだけで、実は他の誰が見ても、留花が最早、男に棄てられたのだというのは紛れもない事実なのではないか。
留花は努めて眼を背けていた蜜柑を睨みつけた。眼に入った途端、猛烈な空腹感を憶え、一個を掴んで皮も剥かずにかじりつく。
留花はそっと伏せていた顔を上げた。
ふと気付くと、傍らに小さな籠が置いてあり、蜜柑が数個入っている。成洙が置いていったのだ。
最初は意地でも食べまいと思っていた。心配してくれるのはありがたいが、成洙もまた他の人と同様に留花が愃に棄てられたのだと端から決めつけている。留花にはそれが哀しかった。
だが、本当にそうなのだろうか? 自分だけは愃はただ忙しいだけだ、明日にはきっと来ると信じているだけで、実は他の誰が見ても、留花が最早、男に棄てられたのだというのは紛れもない事実なのではないか。
留花は努めて眼を背けていた蜜柑を睨みつけた。眼に入った途端、猛烈な空腹感を憶え、一個を掴んで皮も剥かずにかじりつく。
