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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

 その時、自分でも思ってもみなかったある事実が厳然と眼の前に突きつけられたのである。
「赤ちゃん―?」
 留花はそっと腹部を押さえ、手のひらを見つめた。
 もしかしたら、自分の胎内には既に新しい生命が宿っているかもしれない。その子は紛れもなく愃の血を引く子どもだ―。
 留花の思考は目まぐるしく回転する。そういえば、ここのところ、ずっと月のものも来ていない。最後の月事は確か三月の初めだから、もう三月以上も月のものがないことになる。

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