
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
その乏しい知識を総動員してみても、留花は自分が恐らくは妊娠したのだと思うしかなかった。身ごもったのは奇しくも、三月末、漢陽に季節外れの雪が降ったあの夜に相違ない。桜が咲こうとする春先に雪が降るだけでも珍しいのに、あの夜は煌々と輝く満月が浮かんでいたにも拘わらず、雪が舞っていたのだ。そして、極めつけはあの流星。
妖しく紅く白く輝きながら長い尾を引いて堕ちていったあの小さな流れ星は果たして自分にとって、いや、愃にとっては吉兆だったのか、凶兆だったのか。今となっては知る手立てはない。あの時、留花は流星を眺めながら、何かしら得体の知れぬ胸騒ぎを感じたのだ。だとすれば、あの夜にこの身に宿った子が幸せになれるとは思えない。
一体、どうすれば良いのか。男に棄てられたかもしれない今、妊娠が判ったことが良かったのだろうかと疑問に思えてくる。
妖しく紅く白く輝きながら長い尾を引いて堕ちていったあの小さな流れ星は果たして自分にとって、いや、愃にとっては吉兆だったのか、凶兆だったのか。今となっては知る手立てはない。あの時、留花は流星を眺めながら、何かしら得体の知れぬ胸騒ぎを感じたのだ。だとすれば、あの夜にこの身に宿った子が幸せになれるとは思えない。
一体、どうすれば良いのか。男に棄てられたかもしれない今、妊娠が判ったことが良かったのだろうかと疑問に思えてくる。
