
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
愃が留花を棄てるつもりならば、けして子どもができたことを歓びはしない。むしろ疎ましく思うだけだろう。ならば、懐妊を愃に告げることはできなかった。
この子は私の子ども、私だけの子。たとえ愃に嫌われてしまったのだとしても、留花は今でも愃を愛している。愃の血を引く子であれば、たった一人でも育ててゆく覚悟はできていた。むろん、良人を持たない女が一人で子を生み育ててゆくことがどれほど苛酷であるかは想像に難くない。恐らく、留花が考えている以上に、現実は厳しいだろう。
めぐる想いに応えはない。
留花がとりとめもない物想いに耽っているその真っ最中に、表の扉が軋んだ。成洙が戻ってきたのかと思い、視線をそちらに向ける。
留花は小さく声を上げそうになるのを辛うじて堪えた。
この子は私の子ども、私だけの子。たとえ愃に嫌われてしまったのだとしても、留花は今でも愃を愛している。愃の血を引く子であれば、たった一人でも育ててゆく覚悟はできていた。むろん、良人を持たない女が一人で子を生み育ててゆくことがどれほど苛酷であるかは想像に難くない。恐らく、留花が考えている以上に、現実は厳しいだろう。
めぐる想いに応えはない。
留花がとりとめもない物想いに耽っているその真っ最中に、表の扉が軋んだ。成洙が戻ってきたのかと思い、視線をそちらに向ける。
留花は小さく声を上げそうになるのを辛うじて堪えた。
