
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
そう、彼にとって自分は名もない道端の花にすぎなかったのかもしれない。蝶が気の向いたときにほんのいっとき止まり、羽根を休めるだけの仮の居場所だったのだろう。
しばしの憩いを貪るだけ貪れば、蝶はまた別の新しい花を探して飛び去ってゆく。
「そなたは自分がこの花と同じだと、そう言うのか? 私が気紛れにそなたを抱き、飽きたから棄てるつもりだと―?」
愃は呟き、幾分自嘲気味に笑った。
「確かに、そう思われても仕方ないかもしれない。私が今日、ここに来たのは他でもない、もうここには来られないと告げるためなのだから」
とうとう〝その瞬間〟が来てしまった。
留花は眼を軽く瞑って心を落ち着かせてから、再び開いた。長い時間のように思えるが、またたきをするほどわずかの時間のはずだった。
しばしの憩いを貪るだけ貪れば、蝶はまた別の新しい花を探して飛び去ってゆく。
「そなたは自分がこの花と同じだと、そう言うのか? 私が気紛れにそなたを抱き、飽きたから棄てるつもりだと―?」
愃は呟き、幾分自嘲気味に笑った。
「確かに、そう思われても仕方ないかもしれない。私が今日、ここに来たのは他でもない、もうここには来られないと告げるためなのだから」
とうとう〝その瞬間〟が来てしまった。
留花は眼を軽く瞑って心を落ち着かせてから、再び開いた。長い時間のように思えるが、またたきをするほどわずかの時間のはずだった。
