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手紙~天国のあなたへ~

第2章 雪の記憶

 けして背の高い方ではないのに大きく見えるのは、やはり先刻も感じたようにこの男の全身から発散されるオーラのようなもののせいだ。身につけているものにせよ、その気品ある物腰にせよ、この男が両班であることは間違いない。
 留花は深々と頭を下げた。
 この時代、朝鮮では留花の属する常民(サンミン)は両班の下位である。正しくは貴族階級である両班の下に中人(チユンイン)と続く。中人は技術系の官僚が多く、その次の〝良民(ヤンミン)〟と呼ばれる常民が農民、商人などの一般庶民であり、最下級が〝賤民(チヨンミン)〟(または白(ペク)丁(チヨン))、つまり職業も予め決められている隷民層であった。
 ちなみに朝鮮は儒教国家のため、僧侶も蔑みの対象となり、この賤民に分類される。
 常民は更にその下の賤民のように奴婢とされないだけまだ良いが、儒教の理念の下、身分階級制度が徹底したこの国では、支配階級である両班の威光は絶対なのだ。

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