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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

「米びつ―、おばさん(アジモニ)たちはさっきも米びつがどうのって言ってたけど、まさか世子さまは米びつに閉じ込められたの?」
 留花の厭な予感は不幸にも的中した。
 丸顔の女は痛ましげな表情で言う。
「世も末だねぇ。父親が息子を米びつに入れて餓死させるなんて、あたしら庶民の間でも聞いたことないよ」
 更に女は滔々と喋った。世子寛允君はひと月前、突如として義禁府の役人に身柄を拘束され、王城内の牢に監禁された。数日間に渡って、あらゆる取り調べが行われたが、世子は終始毅然とした態度で臨み、無実を主張したという。

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