テキストサイズ

手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

 この年、老論派は一計を企て、世子に叛意ありと英祖に上奏する。英祖は結局、無罪を訴え続ける世子の言い分を信用せず、世子の謀反を密告した羅景彦を罷免し、更に世子を廃し米びつに閉じ込めた。
―父上(アバママ)、どうか私を信じて下さい。
 世子は最後まで訴え続けたが、讒言に惑わされ頑なになっている英祖にはついに届かなかった。
 世子は抵抗もせず、最後は言われるがままに自ら米びつに入ったという。世子が変わり果てた姿となって見つかったのは、その八日後、死因は餓死であった。後の世の人に〝辛壬士禍〟と呼ばれる政変である。
 世子が亡くなったのはこの月(八月)の十二日、薨去から半月以上が経過している。公表が遅れたのは、やはりその尋常でない死に方の外聞をはばかったからであろうか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ