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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

 貼り紙には流石に世子の死の真相までは書かれていない。当然といえば当然ではあったが、このような噂は幾ら上の人々がひた隠しに隠そうとしても、どこからか洩れるものである。宮廷や王室の極秘事項がいつしか巷の民衆にまでひろまっているのは何も別段珍しいことではない。
 大抵は、この場合のように、王宮に仕える女官や下働きの口を通じて、じんわりと水が真綿に滲み込むように人から人へとひそやかに伝わってゆくのだ。
「米びつに閉じ込められて餓死―」
 留花のか細い身体がユラリと揺れた。
「あっ、あんた。大丈夫?」
 丸顔の女が悲鳴を上げた。
「だ、誰か、この娘が倒れちまったよ」
 連れの痩せぎすの方の女が急いで声高に人を呼ぶ。
「行き倒れだよ、誰か手を貸しておくれよ」

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