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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

 幸いにも貼り紙の前には屈強な男たちが何人も集まっており、すぐに地面に倒れた留花の身体はその中の一人によって軽々と抱えられた。
「よっぽど衝撃を受けたんだね」
「そりゃア、そうだよ。たとえ、あたしら庶民とは何の拘わりもない雲の上の方のことでも、父親が実の息子を飢え死にさせて殺すだなんて、ゾッとしないよ。若い娘にはさぞや愕きだろう」
 先刻の女たちの声が遠くなってゆく。
「娘さん、家まで運んでいってやるから、あんたの家を教えてくれねえか? おい、娘さん」
 今度は別の野太い男の声だ。
 でも、もう厭だ。これ以上、眼を開けていたくない。生きていたくない。

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