
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
留花が懸命な面持ちで言うと、主人は更に厭そうな表情で陰気に言った。
「十日ほど前のことだが、まんまと薬代を踏み倒されちまってねえ、こちとら大損してるのさ」
主人の話では、馴染みの客が高価な人参を後払いで分けてくれと言ってきて、ひと月分、分けてやったらしい。
「何でもカミ(女)さん(房)が肺の腑の病だとかで、何とかしてくれって拝み倒されちまって、私も迂闊だったよ」
女房が肺結核だというのは初耳だったが、長年の得意客でもあり、いつもきちんと支払いをしてくれる客だったことから、主人は信用し切っていた。
だが、高価な人参を持ったまま、男は忽然とゆく方知れずになった。
男が行く方をくらましたと知った主人は慌てて探してみたものの、あとのまつりであった。その男はもう半年前に女房とは喧嘩別れし、始終、酒を浴びるように飲んでいたと専らの噂だった。
「十日ほど前のことだが、まんまと薬代を踏み倒されちまってねえ、こちとら大損してるのさ」
主人の話では、馴染みの客が高価な人参を後払いで分けてくれと言ってきて、ひと月分、分けてやったらしい。
「何でもカミ(女)さん(房)が肺の腑の病だとかで、何とかしてくれって拝み倒されちまって、私も迂闊だったよ」
女房が肺結核だというのは初耳だったが、長年の得意客でもあり、いつもきちんと支払いをしてくれる客だったことから、主人は信用し切っていた。
だが、高価な人参を持ったまま、男は忽然とゆく方知れずになった。
男が行く方をくらましたと知った主人は慌てて探してみたものの、あとのまつりであった。その男はもう半年前に女房とは喧嘩別れし、始終、酒を浴びるように飲んでいたと専らの噂だった。
