
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
「あなたは―」
留花は立ち止まり、瞠目した。何故、ここにあの両班が現れたのか。
「これを良かったら、使ってはくれまいか」
彼がおもむろに差し出したのは、錦の巾着であった。明らかに見ただけで、ずっしりと重そうなのが判る。
留花の訝しげな視線にややたじろぐ風を見せ、男は言った。
「誤解しないで貰いたいのだが、いや、やはり妙に思われても当然か」
などと、一人で何やら呟いている。
留花がますます不思議そうな表情になったのに、男は慌てて付け足した。
「そなたが何故か忘れられなかった。あれから、そなたと出逢った場所の周辺を歩いて、そなたのことを色々と訊ねてみたのだ」
留花は柳家の屋敷に行った帰りに、近くの店で買い物をすることがある。それは何もこの薬屋だけではない。八百屋やほかほかの饅頭を売る店など、寄る場所は幾らでもある。そういった店の連中は留花とは顔見知りだから、両班に訊ねられれば、彼女の身許についてすんなりと応えたに違いない。
留花は立ち止まり、瞠目した。何故、ここにあの両班が現れたのか。
「これを良かったら、使ってはくれまいか」
彼がおもむろに差し出したのは、錦の巾着であった。明らかに見ただけで、ずっしりと重そうなのが判る。
留花の訝しげな視線にややたじろぐ風を見せ、男は言った。
「誤解しないで貰いたいのだが、いや、やはり妙に思われても当然か」
などと、一人で何やら呟いている。
留花がますます不思議そうな表情になったのに、男は慌てて付け足した。
「そなたが何故か忘れられなかった。あれから、そなたと出逢った場所の周辺を歩いて、そなたのことを色々と訊ねてみたのだ」
留花は柳家の屋敷に行った帰りに、近くの店で買い物をすることがある。それは何もこの薬屋だけではない。八百屋やほかほかの饅頭を売る店など、寄る場所は幾らでもある。そういった店の連中は留花とは顔見知りだから、両班に訊ねられれば、彼女の身許についてすんなりと応えたに違いない。
