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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

「祖母と二人で暮らしている孝行娘と説明すれば、誰もがすぐにそなたのことだと判った」
 それで、留花の居場所を突き止めて、出かけた先に突如として現れたというのか。ならば、自分の後をつけ回していたということ?
 颯爽と現れ、掏摸の悪事を暴き留花を救ってくれたあの印象的な出逢いと、こそこそと人知れず自分を付け回していたということが上手く結びつかない。
 唖然として見つめている留花を何故か眩しげに見つめ、男は差し出した巾着を更に留花に押しつけた。
「これをお祖母(ばば)さまの薬代に使えば良い」
 無理に持たされた巾着はやはり見た目を裏切らず、持ち重りのするものであった。
「あの―」
―通りすがりのどこのどなたかも知れぬお方に、このようなことをして頂くわけには参りません。
 留花が言いかけるのを聞こうともせず、男は喋り続ける。

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