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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

「私は物乞いではありません」
「そのようなことは判っている」
 両班は当然のような口調で受け流した。それが留花には余計に悔しかった。
 一体、この男は何をどう判っているのか。
 見ず知らずも同然の赤の他人からいきなり大金を投げ与えられれば、餌を恵まれた犬のように誰もが尻尾を振って歓んで食らいつくとでも?
「こんな大金を何の理由もないのに、受け取るわけにはいきません」
 留花が深呼吸してもう一度ゆっくりと言うのに、男は破顔した。
「良いのだ、この私が良いと申している」
 この男は道端で貧しい娘に施しをして、善人か聖人君子でも気取っているのだろうか。
 留花は両手を脇で拳に握り、二人を隔てる距離を縮めた。顎を突き出して、この風変わりで独りよがりな両班を睨んだ。

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