
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
そういえば、と、留花は三日前のあの雪の日の出逢いを思い出す。
―済まない、そなたの気分を害したのなら、謝ろう。
見も知らぬ留花の髪にいきなり触れてきた男に対して、〝私は妓生ではありません〟と突っぱねた留花に対して、あのときも、この両班は自らの非を認め潔く謝罪したのだ。
支配階級である両班は何をしても許されて当然という考えがまかり通っていた時代の話である。そんな世に、こんな拓けた考えの両班もいるのかと、留花は暗闇にひとすじの光を見出したような気持ちになったものだった。
「そなたの役に少しでも立てたならと思ってのことであったが、やはりいささが出すぎたというか先走ってしまったようだ」
照れたように頬を染めて言う表情は、歳よりも随分と若々しく、少年がはにかんでいるようにも見える。この男は随分と様々な顔を持っているのだな―と、留花はこの時、ぼんやりと思った。
―済まない、そなたの気分を害したのなら、謝ろう。
見も知らぬ留花の髪にいきなり触れてきた男に対して、〝私は妓生ではありません〟と突っぱねた留花に対して、あのときも、この両班は自らの非を認め潔く謝罪したのだ。
支配階級である両班は何をしても許されて当然という考えがまかり通っていた時代の話である。そんな世に、こんな拓けた考えの両班もいるのかと、留花は暗闇にひとすじの光を見出したような気持ちになったものだった。
「そなたの役に少しでも立てたならと思ってのことであったが、やはりいささが出すぎたというか先走ってしまったようだ」
照れたように頬を染めて言う表情は、歳よりも随分と若々しく、少年がはにかんでいるようにも見える。この男は随分と様々な顔を持っているのだな―と、留花はこの時、ぼんやりと思った。
