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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

「オンドルが利いているにしても、この部屋はかなり寒いな」
 男は呟いたかと思うと、自ら着ていた毛織りのチョッキを脱ぎ、素早く香順に掛けてやった。
「このようなものでも、ないよりは幾分かはマシだろう」
「良いのですか? そのような上等なものを」
「私はこれでもお祖母さまよりは若くて、健康だ」
 留花の懸念に、男は冗談めかした物言いで笑って見せた。
 と、これまで虚空を漂っていた香順の視線がはっきりと焦点を結んだ。いかにもしっかり者らしい祖母の瞳は、いつものようにすっかり光を取り戻している。
 祖母は若い頃、いやほんの数年前までは占い師をしていた。町の辻で商売をすることもあったし、家に直接相談に来る人もいた。料金は安くて、その上よく当たると評判で、遠くは地方からわざわざ訊ねてくる地方在住の両班もいたほどだ。

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