
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
それなのに、祖母がいまだに貧乏暮らしなのは、占いで儲けようという気がまるでなかったからである。あるときは、祖母に火難―つまり、家が火事になると言われ、腹を立てて帰った商人が後日、山のような宝飾品の詰まった箱を持参して礼に来たことがあった。
―あなたの許から帰ったその夜、一人で酒を呑んでおりましてな、酔ってうたた寝した挙げ句、知らぬ間に机に突っ伏して眠ってしまったのですが、その時、うっかりと文机の上の燭台を倒してしまったのです。
商人は蒼白な顔で告げた。
男は屋敷に帰った早々、愚痴めいた口調で〝とんだインチキ占い婆に出くわした〟と出迎えた妻に一部始終を話した。その話を妻が憶えていて、夜半まで一人きりで酒を呑んでいた良人を案じて様子を見にきたお陰で、燭台が倒れた直後に発見できたのだ。結局、小火程度で済み、屋敷も蔵も無事、むろん、けが人の一人も出なかった。被害が最小限度で済んだのは占い師のお陰だと商人は涙を流して歓び、高価な玉の腕輪や指輪のぎっしりと入った箱を置いて帰ろうとしたのだが、祖母は結局、受け取らなかった。
―あなたの許から帰ったその夜、一人で酒を呑んでおりましてな、酔ってうたた寝した挙げ句、知らぬ間に机に突っ伏して眠ってしまったのですが、その時、うっかりと文机の上の燭台を倒してしまったのです。
商人は蒼白な顔で告げた。
男は屋敷に帰った早々、愚痴めいた口調で〝とんだインチキ占い婆に出くわした〟と出迎えた妻に一部始終を話した。その話を妻が憶えていて、夜半まで一人きりで酒を呑んでいた良人を案じて様子を見にきたお陰で、燭台が倒れた直後に発見できたのだ。結局、小火程度で済み、屋敷も蔵も無事、むろん、けが人の一人も出なかった。被害が最小限度で済んだのは占い師のお陰だと商人は涙を流して歓び、高価な玉の腕輪や指輪のぎっしりと入った箱を置いて帰ろうとしたのだが、祖母は結局、受け取らなかった。
