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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

―すべては、私の中の神さまが私に教えてくれるものだから、私に礼は要らないよ。
 祖母はよくそういう科白を口にしたものだが、果たして〝私の中の神さま〟というのが何を意味するのかは留花にも判らない。
 どうも、何かを占う時、祖母の脳裡には次々と色んな光景が浮かんでくるらしい。即ち、それらが占ってやる者の未来図であるらしいのだが、祖母はその未来を見せてくれるのが〝私の中の神さま〟だと信じ込んでいるようであった。要するに、未来を予見する能力は自分自身のものではなく、神さまの与えて下さったものだから、礼は要らないとそういうことだったのだろう。
 占い師の性分がそうさせるのか、自分がこれという人物、つまり占ってみたいという対象を見つけた時、祖母の眼は爛々と輝き、常の物静かな祖母とは全くの別人のように変貌する。

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