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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

 今、留花は久しぶりに、占い師の顔となった祖母を間近に見ていた。祖母のまなざしの先には、両班―祖母に躊躇いもせず上等のチョッキを与えた男がいた。
「これは、お婆どの」
 男は祖母が目ざめたと知るや、やおら立ち上がった。両手を重ねて床につけ、跪き頭を深く垂れて拝礼する。目上の者に対する最上級の礼ではあるが、これは通常自分より身分が上の者に対して行うものであって、相手が身分の低い常民である場合、いかに年上であっても行うべきものではない。むしろ、祖母の方が両班である男に対して行うべきものであった。

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