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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

 張りつめたような沈黙がその場を支配する。
 祖母のあまりの真剣さに、留花はかえって不安を抱いた。これまで観相をしている最中の祖母を見たことはあるが、ここまでの何というか―鬼気迫る形相を見たのは初めてだ。
 この男の何がこうまで祖母を駆り立てているのだろうか。
 やがて、祖母の口から〝おお〟とも〝ああ〟とも判別のつかぬ声が洩れた。皺だらけの小さな顔には明らかに烈しい驚愕が浮かんでいる。
「お婆どの、私の顔に何かついていますか?」
 男は祖母が占い師であることを知らない。
 あまりに不躾に男の顔を見つめていたものだから、流石に寛容な男も気を悪くするのではないかと案じていたのだが、どうやら、男は祖母の様子に怒りよりも興味を持ったようだ。

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