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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

 好奇心も露わに訊ねるのに、祖母はゆるりと首を振った。束の間、浮かんでいた愕きも今は消え、凪いだ水面のように静まっている。
「これは、とんだご無礼を致しました。ようこそ、むさ苦しい我が家においで下されましたな。このような病床の年寄りにまでご丁重なるご挨拶を賜るとは、ありがたいことにございます」
 最早、起き上がる気力もないのか、祖母は横になったまま、それでも張りのある声音で応えた。細い眼に瞬いた光は既に失われ、どんよりと濁っていた。
 祖母は再び眼を閉じた。健康なときでも、観相をするのは気力、体力を要する。病で弱った身体では、更にこたえるであろう。
 香順は今度こそ本当に寝入ったらしい。規則正しい寝息がかすかに聞こえてくるのを確かめ、留花は微笑んだ。
「ごめんなさい、愕かれたのではないですか?」
 いや、と、男は小さく首を振る。

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