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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

「先刻、そなたは女郎花の想い出が亡くなった父母とのたった一つの想い出だと話していたが、私の場合も似たようなものだ」
「では、愃さまのご両親も既にお亡くなりになっているのですか?」
「いや、私の両親は二人共に生きている。どちらも病知らずで、壮健だ」
 何故か、このときだけ淡々とした口ぶりになったのを訝しく思う暇もなく、留花は謝った。
「申し訳ございません。失礼なことを」
「いや、良いのだ」
 愃の声が再びいつものやわらかさを取り戻す。
「私にとって、つまりは、両親がそれだけ遠い存在であるということでもある」
「ご両親が遠い存在? お元気でいらっしゃるのに?」

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