
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
首を傾げる留花を見、愃は微苦笑を刻む。
「確かに誰が聞いても、おかしな話だろう。留花、そなたの両親との想い出話を聞いていると、もう二度とこの世では逢えぬそなたら親子よりも、現実にこの世に生きている私の父母と私を隔てる距離の方がはるかに遠いような気がしてならぬ。だが、私が育った場所は、そのような場所、いや、むしろ、それが当たり前なのだよ」
愃が遠い瞳を夢見るように宙に向ける。
「あれは今から数えると二十年も前になる。私がそう、七歳のときのことだ。その年、初めて雪が降った日、庭に出て守役と遊んでいたら、偶然、父上が通りかかった。何をしているのかと問われ、雪まみれになっていた私は、また勉強を放り出して遊んでいると叱られるのが怖くて、泣きそうになって震えていたんだ」
そんな彼に、父親はいきなり雪(ゆき)礫(つぶて)をぶつけてきた。愕く彼に、父は満面の笑顔で叫んだ。
―愃よ。こう見えても、かつてはこの父も雪玉投げの名手であったのだぞ。さ、遠慮せず、父に向かって投げるが良い。
「確かに誰が聞いても、おかしな話だろう。留花、そなたの両親との想い出話を聞いていると、もう二度とこの世では逢えぬそなたら親子よりも、現実にこの世に生きている私の父母と私を隔てる距離の方がはるかに遠いような気がしてならぬ。だが、私が育った場所は、そのような場所、いや、むしろ、それが当たり前なのだよ」
愃が遠い瞳を夢見るように宙に向ける。
「あれは今から数えると二十年も前になる。私がそう、七歳のときのことだ。その年、初めて雪が降った日、庭に出て守役と遊んでいたら、偶然、父上が通りかかった。何をしているのかと問われ、雪まみれになっていた私は、また勉強を放り出して遊んでいると叱られるのが怖くて、泣きそうになって震えていたんだ」
そんな彼に、父親はいきなり雪(ゆき)礫(つぶて)をぶつけてきた。愕く彼に、父は満面の笑顔で叫んだ。
―愃よ。こう見えても、かつてはこの父も雪玉投げの名手であったのだぞ。さ、遠慮せず、父に向かって投げるが良い。
