
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
最早、言葉もない留花に、愃は儚い笑みを見せた。
「つまらない話を聞かせてしまった。雪が好きだという理由だけで話を終わらせれば良かったのに、済まぬ」
留花は涙ぐんで首を振った。
「愃さまがお謝りになるようなことではありません。私がお訊ねしたのがいけなかったのです。哀しいことを思い出させてしまって、ごめんなさい」
躊躇いがちに伸ばされた指先が留花の髪にそっと触れる。その次の瞬間、予期せぬ強い力で引き寄せられて、留花の華奢な身体はすっぽりと愃の腕に包み込まれた。
この男が時々、無性に哀しそうな眼をするのは、両親との確執が根底にあるからなのだ。
留花は愃という男の抱える複雑な葛藤をこの時、かいま見たのだった。しかし、留花には何をしたくとも、できるはずかない。
愃の話を聞いただけでも、彼が両班―しかもかなりの名家の子息であることだけは察し得たからだ。
「つまらない話を聞かせてしまった。雪が好きだという理由だけで話を終わらせれば良かったのに、済まぬ」
留花は涙ぐんで首を振った。
「愃さまがお謝りになるようなことではありません。私がお訊ねしたのがいけなかったのです。哀しいことを思い出させてしまって、ごめんなさい」
躊躇いがちに伸ばされた指先が留花の髪にそっと触れる。その次の瞬間、予期せぬ強い力で引き寄せられて、留花の華奢な身体はすっぽりと愃の腕に包み込まれた。
この男が時々、無性に哀しそうな眼をするのは、両親との確執が根底にあるからなのだ。
留花は愃という男の抱える複雑な葛藤をこの時、かいま見たのだった。しかし、留花には何をしたくとも、できるはずかない。
愃の話を聞いただけでも、彼が両班―しかもかなりの名家の子息であることだけは察し得たからだ。
