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手紙~天国のあなたへ~

第3章 血に濡れた鳳凰 

「だって、別にわざわざ言うほどのこともないでしょ。お婆ちゃんを心配させたらいけないと思ったし、結局、あの方のお陰で財布は無事戻ってきたんだし」
 自分でも苦しい言い訳だとは思ったが、この場合は致し方ない。あの男―愃のことは何故か、誰にも話さず宝物のようにそっと大切に心の奥底にしまっておきたいと思ったのだ。たとえ、相手が何でも話してきた大好きな祖母だとしても。
「とにかく、あの男は止めておけ。悪いことは言わない」
「どうして、お婆ちゃん、何で、そんなことを言うの?」
 思わず縋るように見つめると、祖母はプイと視線を逸らした。

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