
手紙~天国のあなたへ~
第4章 野辺送り
ただ、涙が出なかったのだ。本当に哀しい時、人は泣くことさえできないのだ。香順の死を経て、留花は初めてそれを知り得た。まるで身体中のすべての感覚が麻痺してしまったようで、何をしていても、自分が〝生きている〟という気がしない。ただ機械的に身体を動かしているだけで、もう一人の自分がどこかから醒めた眼でそんな〝動いている自分〟を眺めている感じだ。
呼吸をしているのも、何か物を咀嚼しているときでさえ、義務的にそうしないといけないからしているように思えた。
弔いの済んだ日の夜、隣の成洙(ソンス)が〝晩飯でも食いにくるか?〟と誘ってくれたものの、留花は丁重に断った。
今はただ、一人になりたかった。一人でゆっくりとこれからのことを考えてみたかったのである。
でも、考えてみたところで、何をどうすれば良いのかは判らなかった。留花にとって、祖母はこの世で唯一の家族だったのだ。
呼吸をしているのも、何か物を咀嚼しているときでさえ、義務的にそうしないといけないからしているように思えた。
弔いの済んだ日の夜、隣の成洙(ソンス)が〝晩飯でも食いにくるか?〟と誘ってくれたものの、留花は丁重に断った。
今はただ、一人になりたかった。一人でゆっくりとこれからのことを考えてみたかったのである。
でも、考えてみたところで、何をどうすれば良いのかは判らなかった。留花にとって、祖母はこの世で唯一の家族だったのだ。
